店舗の印象を決めるのは、そこで働くスタッフです。
特にリピーターを獲得できるかは、店舗で働くスタッフ次第で決まると言っても過言ではありません。
そのため、お客様に居心地の良い空間を提供するためには、人材育成に力を入れることが重要でしょう。
特に開業前の店舗では、オープニングスタッフが今後の従業員の教育担当となりお店の基盤になると言えますので、しっかりとした人材育成プランを用意する必要があります。
そこで今回は、飲食店などの店舗経営者に向けて、人材育成についてご紹介していきます。
Contents
人材を募集する前に必要なこと
まず、人材を募集する前にいくつか考えておくべきことがあります。
特に小さい店舗であれば、必要としているのはただ作業を行ってくれる「人手」ではなく、自分の店舗に合った有能な「人材」を探すべきだと考えましょう。
どのような人材が欲しいのかを考える
もちろん人材の要望ばかり増えてしまっても応募者が集まらなくなってしまいますが、自分の店舗が求めている人材のスキル・人物像は考えておくと良いでしょう。
元気な掛け声が響くようなお店・落ち着いた雰囲気が売りのお店など、お店のコンセプトがぶれないような人材を確保する必要があるからです。
その他にも、求める人材を考えることで開業後の問題への対応を検討できます。
例えば、若年層のスタッフを集めれば長期的な雇用が期待できない場合も配慮しなくてはいけませんし、学生なら試験期間の人員不足にも対応が必要です。
長期的に働いてくれる人が良いなら、店舗に残ってもらうための待遇も考えなくてはいけません。
開業前のトレーニング期間を考える
開業前の店舗での、トレーニング実施期間を考えます。可能であれば、2週間程度の時間を設け、全てのスタッフにトレーニングをしてもらいましょう。
調理・盛り付け・接客・清掃など細かな部分も含め、営業の一連の流れをロールプレイングすれば、スタッフの不安を軽減しながらそれぞれのスタッフの特徴もつかめます。
また、トレーニング自体がオープニングスタッフのコミュニケーションの場ですので、スタッフ同士はもちろん、指導者側とも良好な関係を築きやすくなるでしょう。
人材育成の注意事項
人材育成にはいくつかの注意事項があります。ただ知識やスキルを伝えるだけでは大きな成長は期待できませんし、注意するべきことを守らなくては数日でお店を去ってしまう人材もいるでしょう。
スタッフを手持ち無沙汰にしない
何もすることがない状態・誰も教育ができない状態になるとスタッフは不安を抱えてしまいますし、非常に居心地が悪いと感じます。
飲食店での業務が経験豊富であれば違うかもしれませんが、多くの新人スタッフは指示がなくては動けません。
そのため、スタッフが自主的に仕事を見つけられるようになるまでは、全てのスタッフに指示ができる状態でなくてはいけません。
スタッフ同士で教育ができる環境を設ける
オープニングスタッフの場合は、飲食店経験者を教育担当者に任命するなどの方法で教育担当者を増やし、スキルの少ないスタッフ全員に目が行き届きやすくします。
オープニングでなければ、中堅スタッフが担当すると良いでしょう。
教育者側は他者に教えることにより、より業務を深く理解できるという利点もありますし、教育担当者が複数いれば、新人スタッフとのシフト調整もしやすくなります。
ただし、一人の教育担当者に負担が増えすぎないような配慮も必要です。
チェックシートを活用する
あらかじめ習得してほしい業務をリスト化してまとめておき、チェックシートとして活用すれば、スタッフは自分の成長を可視化できるようになります。
教育担当者も新人スタッフがどこまで教育が進んでいるのか分かりやすくなり、引き継ぎもスムーズに行えるでしょう。
十分な教育時間を用意する
教育不足でスタッフが自信を持てないような状態での接客や調理は、当事者にも辛いものですが何よりお客様に失礼です。
お客様にとっては新人もベテランも同じ店舗のスタッフ。対応に不安の残る状態で接客をさせ「慣れさせる」というのは、良い方法ではありません。
教育時間のコストを惜しむよりも、トラブルによりお客様が離れてしまう方が問題です。
教育時間には個人差がありますので、新人スタッフごとに変える必要があります。退職者が出ないよう、一人一人の成長スピードに合わせた時間を用意しましょう。
効果的な人材の育て方
効果的な人材の育て方の一般的な例は「準備→提示→実行→評価」です。1つずつの流れをご紹介しましょう。
準備=教育の準備
何をどう学んでもらうかを決め、可能な限りマニュアルを用意します。一度に全てを伝えようとしても覚えることが難しく、相手にも負担を感じさせてしまいますので、その日に教える範囲は事前に決めておきましょう。
教育には段階を踏むことが重要です。
提示=教育の実施と手本
実際にスタッフに教育を実施します。マニュアルを見せた後、またはマニュアルを見せながら、自分が見本となって実際の動きを見せるのが良いです。
実行=ロールプレイング
実際にその場で教えたことをやってもらいましょう。
頭で理解できていても、自分で動いてみると理解不足を自覚する場合や、思っているように上手くいかないことがあります。
評価=改善
ロールプレイングの結果、改善点があれば伝えます。ここで重要なのは、改善点だけを伝えないようにすることです。
人間はできていないことだけに注目してしまうものですが、できていることも褒めてあげなくてはスタッフのモチベーションが上がりません。
例えば接客についての評価なら「とても丁寧な言葉遣いができていたけど、少し笑顔が足りないから次から笑顔を心がけてみよう」などです。
良いところ・悪いところをセットにして伝えるだけで相手への印象は大きく変わります。
働きやすい環境を整える
職場環境が悪くては人材育成もスムーズに進みませんし、業務のオペレーションにも響きます。人材育成とともにスタッフが育ちやすく働きやすい環境づくりを行いましょう。
席に番号を決める
小さい店舗では不要な場合もありますが、ほとんどのお店では席に番号がつけられています。
可能な限り直感的に覚えやすい並びで、言いやすい数字やアルファベットが良いでしょう。
ホールスタッフが苦労するのは席順やメニューを覚えることです。席番号だけでもスムーズに覚えられるように工夫すると良いですね。
収納を考える
収納と人材育成は関係がないように感じるかもしれませんが、どこに何があるのかが分かりにくいお店では業務が円滑に進みません。
業務中は収納からカトラリー・調理道具など様々なものを出し入れするので、働き始めたばかりでもスムーズに業務が行えるような収納をスタッフと話し合いながら決め、改善を繰り返しましょう。
業務マニュアルについて
しっかりとした人材育成に欠かせないのがマニュアルです。口頭で伝えれば良いという考えは間違いです。
口頭で伝えたものは覚えられにくく、スタッフ間で正確に伝達することも難しいでしょう。
店舗を運営するためには多くの業務があります。マニュアルがあるかないかで業務を覚える負担・教える負担は大きく変わるのです。
特に就業経験のない新人アルバイトを採用する時には、マニュアルがあるだけでスタッフの不安を軽減させられますよ。
業務マニュアルの作り方:分かりやすい内容を心がける
マニュアルは、飲食店で働くのが初めての人が読んでも分かりやすいように「誰が読んでも分かる」内容にします。
専門用語を使用するなら、その意味も必ず記載しましょう。
そして、オープニングスタッフだけでなく、開業後に採用になる従業員にも使える内容にします。
文章だけでは理解が難しいものもあると思いますので、写真やイラストも積極的に取り入れましょう。
業務マニュアルの作り方:スタッフの意見を取り入れて改善する
開業前のマニュアルは実際の業務を想定しているだけです。いざお客様が来店すれば、マニュアルに追加すべき事項や改善すべき項目も出てくるでしょう。
はじめに作成したマニュアルは仮のものであると位置づけ、スタッフの意見を聞いてどんどん改善していきましょう。
数年もすればその店舗に最適でいて、どのような問題にも対応できるようなマニュアルが完成するでしょう。
スタッフに長く働いてもらうためにできること
一生懸命に人材育成をしても、短期間でスタッフが辞めてしまっては意味がありません。
すぐ辞めてしまう能力の高い人材よりも、長く勤めスキルアップをし続けてくれる人材の方が、店舗にとっては大切にしたい存在ですよね。
正解はありませんが、どうすれば長く勤めようと思ってもらえるのか?店舗ができる対応を調べました。
人材に余裕を持つ
「必要最低限の人件費で営業を回したい」これは、多くのオーナーが考えることです。
しかし、スタッフの体調不良や突然の退職者が出た場合に対応できる状態を、常に作っておく必要があります。
もし、マイナスの人員で何とか営業ができたとしても、それはスタッフたちに大きな負担を与えている事を理解しなくてはいけません。
しかし、現実問題では常に余剰従業員を用意するのは難しいでしょう。
その場合、どのような状況にも対応しやすいよう、シフトの面で工夫をするとリスク回避もしやすくなります。
工夫方法としては、
・お客さんが少ない時間は少ない人員にする
・仮版を作成して調整する
・負担が多いスタッフのタスク割り振りを考える(負担の少ないタスクを回す)
などです。
スタッフを評価する制度を設ける
人間は承認欲求が強い生き物であり、他人から認められているかどうかでモチベーションに影響があります。
店舗で階級制度を設け、少しずつランクアップできるようにすれば「自分は認められている」と感じられるでしょう。
ランクごとに「任せられる仕事」の範囲を決めることで「自分の方が難しい業務をしているのに評価されていない」という不満も解消できますし、達成感や責任感も育てられます。
さらに、ランクが上がれば時給も上がっていくシステムを設ければ「多くの業務を任されているのに待遇が同じだ」と感じるような不満にも対応でき、時給が上がるほど退職希望を減らすことも可能です。
ただし、この評価には分かりやすい公平な評価が必要です。
「店長に気に入られているからランクアップした」ではスタッフ内の不満が増えるだけだからです。
テスト形式を設けるなどの工夫をして、誰が見ても公平であると感じる評価制度を用意しましょう。
公平な評価のために利用できる人事考課の方法としては、例えば
・成績順位法
・人物比較法
・評定尺度法
・プロブスト法
などがあります。
それぞれに特徴があり、評価の方向性が少し異なりますので、「自分のお店では何を重視するか?」を基準に人事考課法を選んでみると良いでしょう。
定期的な面談の機会を設けてスタッフの不満を聞く
大きな不満を抱えていたとしても、オーナーや店長を呼んで不満を訴えるスタッフは少ないと思います。
数ヶ月に1度でも個人面談を行えば、2人きりでスタッフの気持ちを聞けます。
困っていることだけでなく今後の目標、または世間話だけでも構いません。
もちろんそのスタッフに改善してほしい点があれば伝える必要もありますが、可能な限りスタッフの話を聞く機会と考えた方が良いでしょう。
早いうちにスタッフの不満に対応できれば、退職を防ぐことができるかもしれません。
まとめ:飲食店などの店舗経営者必見!人材育成はどのように行うべき?
今回は、飲食店の顔とも言えるスタッフの人材育成についてご紹介いたしました。
特にオープニングスタッフの場合は店舗側も手探り状態ですが、スタッフの意見を取り入れながら共に成長していくという気持ちを持ちましょう。
そして、大切に育成したスタッフに長く勤めてもらえるような、職場環境づくりも続けなくてはいけません。
スタッフが心地よく働けるお店は、顧客にとっても居心地の良い空間になるでしょう。