飲食店の経営を始める人、すでに始めている人の中には「本当に経営していくことができるのか…」「このまま赤字で閉店してしまうのか…」という不安に駆られている方もいらっしゃるかと思います。
経営が絶対に成功するという保証はありません。環境の変化に伴って売り上げも上下してしまうものです。そこで今回は、飲食店を開業する前、そして開業した後でもできる経営ノウハウをまとめてみました。
この記事を読んでリスクを最小限に抑えられるようになりましょう。
Contents
開業前にやっておくべき6つのこと
まずは、開業前からやっておくべきことを6つ選出して紹介していきます。
最低限でも以下のことは押さえておきましょう。
・コンセプトを決める
・経費全般を把握する
・事業計画書の作成
・保健所による審査の傾向と対策
・トラブルを前提に準備する
・店舗のアピールを行う
コンセプトを決める
まずは、どういったお店にしたいのか『コンセプト』を決めましょう。
何を提供するお店なのか、どんな人に来店してほしいのか、お店の雰囲気はどんな感じにするのか、来店してくれたお客様にどんな気持ちになってもらいたいのか、などです。
コンセプトは、そのお店を経営していく上での基礎であり基盤です。
スタートからゴールまでしっかりとした道標を作ることで、途中でミスをしても修正がききやすくなります。
経費全般を把握する
利益を出すためには、開業したらどのくらいの経費が必要になるのか事前に計算しておくことが大事です。仕入先、固定費、光熱費、人件費など細かい部分までシミュレーションしておきましょう。
もちろん、開業にかかった費用も管理しておくことが大事になります。
最初は難しいかもしれませんが、『原価率』と『在庫回転率』なども覚えておくべきです。
原価率とは、売り上げに対して原価の比率がどのようになっているかを表すものです。
原価率の計算には計算式を用いるだけでなく、ロス高やロス率なども関係していきますので、最初は敷居が高いかもしれませんが、売り上げを上げるには絶対に知っておくべき知識となっています。
商品回転率とは、その名の通り在庫の回転率を数値化したものです。
事業計画書の作成
事業計画書とは、その名の通り「今から行う事業の計画書」です。
どのようなお店にするのか、誰をメインターゲットにしているのか、どんなメニューを提供するのか、どのくらいの売り上げになるのか、店舗拡大を考えているのか、など今後どのような事業が行われていくのかまとめます。
事業計画書を作成する意味としては、経営の指標でもあり、ライバル店との差別化を図るためのものです。
そして、『資金調達』にも事業計画書は必要なものとなります。
資金調達に利用するのは主に、銀行などの金融機関や国が出資する日本政策金融公庫などです。
しかし、融資のお金が返ってくるか分からない人には貸さないですよね。
そこで重要なのが事業計画書なのです。
「〇年〇月には、〇〇人のお客様が来店する見込みがあり、〇〇円の黒字になる・・・」と事業計画書を提出して説明することで印象も良くなりますし、長期的な付き合いもできる可能性が出てきます。
保健所による審査の傾向と対策
飲食店を開業するにあたって、保健所による審査は必ず必要となります。
開業しようとしているお店が、定めた基準に達しているのか、開業して問題ないのか、お客様が来店しても安全なのかなどを確認します。
チェック項目をすべてクリアしない限りオープンすることはできません。オープン日を決めたとしても、その日までに審査が通らなければオープンできないのです。
オープン予定日に開店できなければ、オープンを待っていたお客様の信用はなくなってしまいます。
スケジュール調整はしっかりとして間に合わせるようにしましょう。
そのためには、事前にしっかりと確認して対策しておくことが大事です。
トラブルを前提に準備する
日本は災害大国と言われるほど、地震や台風などによる自然災害が多く発生します。
いつどこで発生するかも分からないものですので、いつ自分のお店が被害に遭うか予想できません。
そこで、もしもの時のために『店舗保険』に入っておきましょう。
それと同様に、火を使うことの多い飲食店は火災のリスクもありますので『火災保険』などの防災対策をしておくことが大事です。
災害に遭ってから対策しても意味がありません。できるだけ開業前に対策しておくことをおすすめします。
店舗のアピールを行う
いざ「オープン時期が決まった!」となっても、そのお店の存在を知らなければお客様は来ません。
そのため、まずはお店を目一杯アピールするようにしましょう。
おすすめなのが『SNS』を使ったアピールです。
ネット社会だからこそ大きなアピール効果と反響がありますし、基本的に無料でアピールできます。
SNSでアピールしていく上で大切なのは以下のようなことです。
・できるだけ複数のSNSを使う(Twitter、Instagram、Facebookなど)
・オープンする直前ではなく、開業決定からオープンするまでの工程から発信していく
・どんなメニューがあるのか様々な角度から発信する
・お店の情報は抜けがないようにする(店名、住所、電話番号など)
重要なのは、オープン後もしっかりとアピールしていくことです。
経営が波に乗って余裕ができた場合などは、インフルエンサーなどに依頼してお店をアピールしてもらうのも一つの手です。
アピールはすればするほど多くの人の目に止まります。新メニューやキャンペーン情報、コラボ情報なども絶えず発信していきましょう。
また、それに併せて商圏内へのチラシ配布や、WEBを使った広告なども行っていくことをおすすめします。
開業後にやるべき5つのこと
では、開業後にやっていくべきことを5つのポイントで解説していきます。
・在庫・勤怠はシステム管理がおすすめ
・QSCをおさえる
・FLコストの分析と改善
・ABC分析をしてみる
・人材育成にも力を入れよう
在庫・勤怠はシステム管理がおすすめ
在庫管理は、飲食店だけでなく多くの店舗で必要になってくるものです。
在庫が余ると店舗側の負担になりますし、在庫がないとお客様への提供にロスが発生してしまいます。
どちらの場合でも経営を圧迫していく事態です。
これらの管理を徹底しながらスマートにこなしていくには、専用のアプリケーションやサービスの導入をおすすめします。
最近ではパソコンやスマートフォン・タブレットで簡単にダウンロードすることができます。うまく活用することで、経営もスムーズに進んでいくでしょう。
そして、従業員を雇う場合に必要になってくるのが勤怠管理です。
従業員を雇う以上、誰が何日の何時から何時まで働いてくれる予定なのか、当日本当に時間通り働いてくれたのかを管理する必要があります。
担当もありますし、給料の支払いなどもあるので間違いやミスは減らしたいところです。
近年は勤怠管理システムを導入するお店も増えており、シフト表の作成から毎月の集計まで短時間で行うことができます。
連絡がいつでも取れるように「LINE」なども交換しておくと良いでしょう。
QSCをおさえる
「品質(Quality)」、「接客(Service)」、「清潔さ(Cleanliness)」の頭文字を取ったのが『QSC』です。人気のある飲食店にしていくための行動指針とも言えます。
拘りのある食材を使うことで「品質」が上がり美味しく食せますし、提供された料理の説明を詳しくしてくれる「接客」はお客様の感心を呼ぶことができます。
店内をしっかりと清掃することで「清潔さ」を生み、気持ちよく食事を楽しむことができるでしょう。
このように、どれか一つでもレベルを上げればお客様の評価が上がるということです。
評価が上がるということは、それだけ口コミやリピートに期待でき、売り上げにも直接影響してくるでしょう。
FLコストの分析と改善
「お客様が来れば来るほど売り上げが上がって黒字になる…」と思っている人もいますが、実際に開業してみると「来客は多いのに黒字にならない…」という人もいます。
これにはいくつか原因があると思いますが、まずは『FLコスト』の分析をしてみましょう。FLコストとは、食材費原価(Food cost)と、人件費(Labor cost)の頭文字を合わせたもので、飲食店を経営していく上で重要視しなくてはいけない経営指標のことです。
FLコストは経費全体の50%~60%に抑えなければ、いずれ赤字になる可能性も・・・開業したらまずFLコストを整えると良いでしょう。
ABC分析をしてみる
飲食店を経営していて「どのメニューが人気なのか、売り上げに貢献しているのか」をしっかりと把握しているでしょうか。把握していない人は『ABC分析』を取り入れてみると良いです。
ABC分析とは、メニュー別に売り上げを算出し、どのメニューを優先的に提供・アピールしていくべきかを確認する方法です。
ABC分析の考え方は「商品の売上高の8割は全体の約2割が生み出す」というパレードの法則が基になっています。
人気があり売り上げにも貢献しているメニューはAランク、Aランクほどではないが一定の人気を売り上げがあるメニューをBランク、人気も売り上げも期待できないメニューをCランクとします。
Aランクは品質を保ちながら更なる進化を目指し、Cランクは大幅な強化や入れ替えを検討すべきです。
ランクを見極めながらお客様が求めているものを分析し、売り上げに貢献できなさそうなメニューはリスク軽減のために対策を取っていきましょう。
人材育成にも力を入れよう
自分一人の力だけでは飲食店の経営はできません。
料理人・清掃員・ホールスタッフなど多くの人を雇う必要があります。
だからこそ、雇う人物はしっかりと見極める必要があるのです。
最近では飲食業界の人手不足が深刻化していますが、雇用後の育成にも力を入れていきましょう。
では、どのような基準で雇用すべきなのか解説します。
・会話(コミュニケーション)がしっかり取れる
・どんな相手でもひねくれずに対応できる
・お客様、お店のために一生懸命になれる
・こちらの指定したことを守れる
最低でも、上記のことを厳守できる人を雇用しましょう。
これらが厳守できるということは、そこから成長する可能性も高いということです。
目標は、「このお店の従業員は気持ちのいい接客でまた来たい」とお客様に思ってもらえるレベルです。
リピートが増えるのは、黒字にするために重要な要素ということを覚えておくと良いでしょう。
電話対応・NGマナーはしっかり教える
従業員を育てる上で、まずは基本的な電話対応ができるようにしておきましょう。
対面での接客も重要なのですが、電話による対応によって心証が良くなることもあります。
とくに『クレーム処理』は非常に対応が難しく、慣れておかないとお店の評価を落としてしまう可能性もあるのです。
そして、接客におけるNGマナーも厳禁です。例を挙げると以下のようなものです。
・清潔感がない(服が汚い・髪がボサボサなど)
・笑顔がなく無愛想な対応しかできない
・マニュアル通りの接客しかできない
・接客時にネガティブワードを使ってしまう
他にも様々なNGマナーはありますが、自分がお客様の立場だったら嫌なものばかりですよね。
接客マナーに確実な正解はありませんが、相手が不快に感じてしまうことは多くあります。
お客様のため、そして従業員のためにもしっかりと指導するようにしましょう。
まとめ:飲食店の経営ノウハウを大公開!開業前から開業後まで網羅!
今回の内容をまとめますと、
・開業前にはしっかりとコンセプトや事業計画書を作る
・開業前からSNSを使ってアピールする
・開業語は勤怠・在庫管理システムを導入する
・FLコストの分析やABC分析を行う
という事でした。
開業前、開業後どちらもやることは非常に多いです。ノウハウに従ったからといって確実に成功するという保証はありません。
開業前に考えていた事業計画書のようにいかないこともあります。
それを修正していくためにも、開業してから何がダメだったのか、改善すべき点はどこなのか検討し実践していくことが大事です。